ポルフィリンとは?

 ポルフィリンは、拡張π共役系を有する平面性複素環分子であり、構造の美しさだけでなく、その光機能性や酸化還元活性、汎用性の高いジアニオン(2-)配位子としての錯形成能などから、構造有機化学、錯体化学、光化学、触媒化学などにわたって幅広く研究されている。また、最も有名なポルフィリン錯体として、ヒト等の血液(赤血球)中にある酸素運搬体としてのヘモグロビンがある。その他、鉄—ポルフィリン錯体を補因子(活性中心)とする多くのいわゆるヘムタンパクやヘム酵素が存在し、それらの化学は生物化学や生物無機化学でも盛んに研究されている。

 ポルフィリンは通常平面構造を有するが、ちょっと細工をする(置換基を導入する)と自在にその構造を変化させることができる(下図に主な歪み構造を示す)。我々のグループでは、主に、ポルフィリンの周辺部にフェニル基を導入した、サドル型ポルフィリン(下図左端)であるドデカフェニルポルフィリン(H2DPP)及びその誘導体を用いて、これまでにない面白い構造体の構築とその機能開発を行っている。

 サドル型ポルフィリンの特徴として、


(1)金属錯体を形成した場合、中心金属のルイス酸性が通常の平面性ポルフィリン錯体に比べて向上し、より強い軸配位が可能となる(Eur. J. Inorg. Chem. 2009, 727)


(2)ピロールの非共有電子対と中心金属の相互作用が弱まるため、ポルフィリン環の酸化電位が低下し、電子移動における電子供与性が向上する


(3)ジプロトン化ポルフィリンジカチオンが容易かつ安定に形成され、電子受容体としての機能を発現する


(4)ジプロトン化体における強い水素結合を利用して、安定な超分子構造を構築できる



という点が挙げられる。


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