1.金属錯体における酸化還元反応
(a) 高原子価金属−オキソ及びオキシル錯体の生成とその基質酸化反応に関する研究
(b) 水素移動反応の反応機構に関する研究
(d) 光エネルギーを化学エネルギーに変換する人工光合成に関する研究
1.金属錯体における酸化還元反応
(a) 高原子価金属−オキソ及びオキシル錯体の生成とその基質酸化反応に関する研究
(b) 水素移動反応の反応機構に関する研究
(d) 光エネルギーを化学エネルギーに変換する人工光合成に関する研究
水素移動(HAT)反応は、水素(H• = H+ + e–)が移動する反応である。HATがPCET機構で進行する場合、プロトンと電子は別々のサイトに受容される。RuIV=O錯体の場合、プロトンはオキソ配位子に、電子はRuIV中心に受容される。
C-H結合から金属−オキソ錯体へのPCET
PCETは、次のような熱化学的正方スキームにより議論される。
PCETに含まれる反応過程:ET = Electron Transfer(電子移動), PT = Proton transfer (プロトン移動),
CPET = Concerted Proton-Electron Transfer (協奏的プロトン電子移動)
HATは、協奏的なPCET(Concerted Proton-Electron Transfer)だけではなく、オキソ錯体の酸化還元電位、基質の酸化還元電位によっては、逐次的なET/PTを経由する。これらの反応機構は、基質と酸化活性種の性質によって変化する。例えば、同じ酸化活性種(RuIII-OH錯体やCrV-オキソ錯体)でも、反応機構が基質によって変化することも明らかにしている。最近では、CPETの非同期性に関心が高まっているが、我々は、プロトン存在下でのRuIV=O錯体によるHATにおいて、酸化的非同期性を示す反応機構を初めて見いだしている。
HATは、水素受容体としてプロトンと電子を受容できれば、金属−オキソ錯体でなくても進行する。複素環補酵素であるプテリンを配位子とするRu(III)錯体は、プテリン配位子がプロトンを受容し、Ru(III)中心が電子を受容する。これらの研究によって電子受容体とプロトン受容体の性質によって、HAT反応の遷移状態が制御されていることを明らかにした。発表時は意識していなかったが、フェノール類のRu(III)-プテリン錯体によるPCET酸化反応は、”Basic Asynchronous CPET”に分類されると考えられる。
基質からRu(III)-プテリン錯体へのHAT反応
関連論文
1.T. Kojima et al., Dalton Trans. 2016, 45, 16727-16750 (Perspective)
2.S. Ohzu et al., Chem. Commun. 2014, 50, 15018-15021
3.H. Kotani et al., Chem. Sci. 2015, 6, 945-955
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<研究テーマ2>
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